意外に、議事録を取らない中小企業って多いのです。
数百の会社に入らせていただいてきましたが、議事録や共有ボードがない、何が決定事項なのかわからないという会議参加者の声をたくさん聞いてきました。
あるサービス業の企業に3カ月程のコンサルティングに入りました。
担当マネージャーは、他店から異動したばかりで多くの問題を抱えていました。
業績は悪いわけではないのですが、社員の仕事の仕方に非常に不満があり、統一感のある組織に変えようという狙いがあるのです。
マネージャーが変わったことで、しくみや配置、風土まで刷新したいという目論見がありました。
私は社長経由で依頼され、そのマネージャーの支援をすることになったのです。
初めてリーダーのミーティングに入って、私は驚きました。
その会議では、口頭戦術。誰も、メモしない組織なのです。
議事録は当然ないのですが、誰も手帳も持っていない、メモするようなそぶりもない、筆記具も持たずに、席に座っているのです。
当然ですが、ホワイトボードもない会議室なのです。
「これから〇〇をやって欲しい。そのために、まずは現場の問題があれば意見を言ってくれ」とマネージャーは提示しました。
すると堰を切ったように、座っているリーダー達は不満や問題を話し始めました。
口々に話す言葉は、かなり感情的、感覚的なものでした。多くは否定的で会社への不満のような意見が多かったのです。
記録しなくても意見は矢継早に、スピーディーに出るものです。
メンバーは人の話をちゃんと聞いているのか?聞いていないように見える。メンバー同士で目を合わせているわけではなく、皆は下を向いています。
言葉だけでのやりとりなので、空中分解していくような感覚があります。
意見の整理がしにくく、結局、何が真の問題なのかがわかりにくいのです。
意見が出るたびに、マネージャーは、「それはいい」「それは悪い」などとイチイチ反応して判断していました。
・・・文字に記録するという文化がない組織があることに違和感がありますが、現業であること、身体を使うサービス業であると、
会議も文字によるコミュニケーションを取らない習慣が根付いているのかもしれません。
そこで私は、その時間に白紙にメモしました。録音機能を使うことは避け、できるだけすべてを文字に記録しました。
これが、この組織の問題なのではないか?
何も整理できていない組織ではないのか?
何ができて、何ができていなくて、どこがどんな進度で、目標に対してどの程度達成しているのか、・・・
すべては言語と数字で把握しなければ正確な議論ができないのではないか。
決まったことを文字にして、全員に通達するためにも、記録がまずは大事です。
「ちょっと待ってください」
私は、その時間、筆記したレポートをマネージャーに見せました。
意見を整理し、色を変え、構造化して見せました。
「ここがもっと具体化すべきではないでしょうか?」と私の意見を言わせてもらいました。
「そうだな。ああ、この出た話は忘れていた。大事なことだ」・・・そうです、マネージャーは全部の話を覚えてはいられないのです。
会議後、マネージャーと話して決めたことは、まずは議事録をきちんと取りましょう!ということです。
私がコンサルティングに入って初めてのアドバイスでした。
この会社はここから、変わったのです。
議事録、話し合いの整理、そこからやるべきことが発見でき、行動につながるのです。
文字化をやらない人・・・意外といるのではないでしょうか。