コーチングが上達、そして実現するために

主体的な部下を育てるためのビジネスコーチング研修、2日間コース担当を終えて出張から戻り、
その翌日、続けて部下育成のためのリーダーシップ研修の講師担当をいたしました。
来週も同様研修があるため同じテーマが続いています。

職場で第一線の実務責任者や若手リーダーが抱える悩みは共通のことがあります。
後輩、つまり部署メンバーがなかなか育たないというイラ立ちがあるのです。
指示待ちで受け身な仕事姿勢、目標を持っていない、教えてもなかなかやらないので待てない、結局自分が忙しくなる・・・など
後輩たちの育たなさへの問題意識を持っているリーダーの声を多数聴くことができました。
彼らは、一様に、仕事人間化していて、余裕が無さそう…。人手不足もあり、疲労感もあるのかな?
どこでも似たような状況にあることが推測できます。

さて、担当するリーダー研修では、その解決を目指しました。
共通してわかったことが下記です。

①日常の承認不足、心理的安全性が低い可能性
「この業務は完遂してくれた」「いつもミスなくやっている」「こんな成果を出した」等の感謝とか、承認をメンバーに対して伝えていない、
または不足であることがわかりました。
そのため、自分が何をやっても役に立っていないというやりがいのなさ、不安、自信のなさが大きくなってしまいます。
そんなことが続くと、先輩や上司に自分から意思表示や相談などをしにくい関係性になるのではないかということがわかりました。
よく観察して承認メッセージを伝える意識、スキルを鍛えました。
単なる「ありがとう」「お疲れ様」だけではなく、「〇さんはいつも□の点が丁寧で助かるよ」「〇さんがやってくれたソースコード入力が
すごく速くて助かったよ、次の仕事にすぐ取りかかれた」など、できるだけ具体的に部下の貢献を褒めましょう。
部下がやりたかったことができていた時は一緒に喜びましょう。
上司が指示してやってもらったときには、あなたのお陰だよという気持ちをメッセージに込めましょう。
そんなコミュニケーションが繰り返されることで、職場の心理的安全性が高まり、部下の満足度ややる気が上がっていきます。

②指示が曖昧で相手と共通認識になっていない。
「あれやっておいて」「これをお願い」で伝わっていると思っているが、リーダーが言わんとしていることが
実がメンバーには伝わっていない、わかっていないかもしれないことを認識しました。
具体的な指示が必須です。
「こちらのデータ入力が急ぎ3日後までにA社報告に必要なのでお願いします。
具体的にはМマニュアル33ページを見ながら〇〇システムでやってください。
不明な時は、前年度作成したものがこの表になるので表を参考にしたらわかりやすいと思います。
やってみてわからないときはいつでも聴きに来てください」
など、仕事の目的、やり方、期限、判断の方向性などを具体的に話して部下と共通認識にしておきます。
もしかしたら、必要性とか意義はしつこく説明できているかもしれませんが、仕事の仕方がわからなくて不安になるという部下が
傍にいるかもしれません。
研修では指示の仕方を何度か練習しました。皆さん「意外に難しい」「できていると思っていたけど伝わっていないかも」と
口々に反省しながら、練習に励んでいました。

③質問して相手に考えさせることが不足。
問いかけや質問をせず、一方的な指示による強制パターンに陥っているために主体的な部下に育っていない点があるようです。
基礎的で固定的な知識や情報は指示伝達で指導するが、一方で、仕事の計画ややり方については部下本人の裁量で決められる方が主体性が高まります。自分で考えて仕事の工夫する場面や機会が多いことで、人はますます意欲がたかまることがわかっています。対話形式で話すことで、アイデアや、意見を問うと、本人の思考を知ることができます。

研修では、面談での適切な質問の仕方を訓練しましたが、とても質問の出し方が難しいという声に終始しました。
「上司が教えて部下は黙って従う」という旧い育成の職場だと、上司の意見が正解だと思ってしまいます。
コーチング練習では、上司からの指示をしない練習をしました。
部下が「〇をしたい」という答えをもっているのだから、その考えや感情を聴くのです。
しかし、私からのダメ出しは続きました。
みんな平気で、一方的な上司目線での指示になっています。
「〇〇で困っています」に対して、すぐ「では、こちらにしなさい」
続けて「そのための準備をしていないからそうなるんだよ」
おまけに「ダメなら他の方法をとりなさい」
・・・気がつくと、あれだけ、言ってはいけないと話した指示的なコミュニケーションばかりになっているのです。
部下役の人は何も発言できず、説教を聞かされるはめになっています。

リーダーのほとんどが、スピード優先かつ課題優先で他者心情理解がやや少ない点を認識しました。
仕事ではもちろん課題優先ですが、幸福感のある職場、主体性のある人を育てない職場では
職場において目標達成へのコーチングの重要性を理解できました。
皆で輪になってのワークは多様な意見交換で活性化しました。
それぞれが部下役になる、上司役になる・・・というロールプレイを繰り返すことで、相手の気持ちを体験することができました。
「ああ、こう言われるとうれしい」「うわ、否定された」「目標を訊かれたのに答えられない」・・・などの気持ちを体験できました。
参加者同士の意見交換が活発な研修では、他者の発言が非常に参考になります。
「そんな考えもあるのか」と感心する場面が多く、視野が広がり、自分の固定概念を認識できる瞬間になっていくのです。

たして、一般社員、部下がもつ仕事の目標は実現できるのでしょうか?
目標を描いても、仕事の自由なやり方を求めても、実現させてくれる組織ではあるのでしょうか?
問いに対して考えを発しても、発しただけで、宙に消えてしまう職場であるのなら、
コーチング練習をしても、ワンオンワン面談練習をしても意味がありません。

研修では、個人的な目標を具体的に設定して発表してもらいます。
自分自身が目標をもつことの意義、重要性を認識し目標に向かって主体的に行動していきたい、計画を実行に移したいという意識を持ちます。
参加者は学んだコーチングスキルを職場で大いに活用していただきたく思います。
提案的な話法は会社にも上司に対しても使っていけます。
対話型のチーム、対話型の社会をつくっていきましょう。
もし、対話の職場風土がないのであれば、目標実現できる職場でないのであれば、若い皆さんから変えていってほしいと思います。
「皆にコーチングを広めたい」等の頼もしい感想も聞けました。
ぜひ実践を続けていただきたいです。

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